1月19日に行われた「日韓決闘大会 JAPAN Round」はいわば前半戦にあたり,Set1~Set3の3回戦を行い,「6-5」と日本が1ポイント優勢という結果に終わっている。
2月3日のKOREAN Roundで残るSet4,Set5を戦い,その総合成績によって優勝国が決定される。またこの日は,国別対抗戦とは別に,アラド戦記最強のプレイヤーを決める個人戦も同時に実施された。
今回4GamerはKOREA Roundを現地取材してきた。韓国におけるアラド戦記(原題 Dungeon & Fighter)の人気の高さ,そして日本選手の健闘ぶりをお伝えしよう。
浴衣に着替えてからメイクをしてもらう日本チームの面々。男性の彼らがお化粧するのは,たぶん人生初の体験なのではなかろうか? | 抽選会前に談笑するメンバー。なお,一部マシンでパッド設定がうまくいかない,スキルの効果音が出ないなどの不具合が発生。予定より1時間遅れで予選がスタートした |
大会当日のスケジュールは,まず11:00AMから個人トーナメント予選を行ってベスト4まで選出し,1:00PMよりメインステージ上で優勝者を決め る予定だったのだが,選手の会場入りは何と朝の8:00AM。事前のセッティングや入場のリハーサルを含めても,これはかなり早いなあと思われる時間だ。
というのも,本大会の様子は韓国の24時間ゲーム専門チャンネルで放送されるため,ユニフォームへの着替えに加えて,全員テレビ向けにメイクする時間が 必要なのだ。なお,放映が韓国ではちょうど旧正月の時期であり,ユニフォームには“各国の伝統衣装”が選ばれ,韓国チームは韓服(ハンボク)を,日本チー ムは浴衣を着用していた。素材や色合いによっては礼服にもなる韓服に比べると正装度は落ちるものの,まぁ浴衣も伝統的な衣装といえなくもないか……。
個人戦の組み合わせ抽選だが,初戦は必ずチームメンバーの誰かと当たるようになっており,日本チームの組み合わせは以下の通りだ。
輝の進選手 vs. ファバル選手
アミリア選手 vs. あー君選手
予選会はメインステージではなく,大学の教室のようなだだっ広い部屋で好きな席を選んで座るという実に自由な空気。どちらの選手も自分の試合がないときは,他人のプレイをうしろからじっくり偵察可能というゆるゆるさだ。
ただし,試合には必ず審判が立会い,不正行為やマシンの不具合が影響を与えていないか,きちんとチェックしている。予選直前までは浴衣姿で写真を撮り 合ったり,近い席のメンバーとしゃべりながらスキル取りをしていた彼らも,審判が背後に立ち予選開始が近づくとやはり緊張するらしい。しきりに掌の汗をふ き,口数も少なくなり真剣な表情に変わるのが見て取れた。
日本チームから2回戦に進んだのは,寿選手,ファバル選手,アミリア選手の3名で2回戦以降は韓国選手との試合も組まれる。最終的にベスト4に残ったのは,寿選手,ファバル選手,カマエルセラフ選手,ミサ選手となった。
韓国チームリーダーのジンヨンアサランヘ選手は,「今日は本当に多くのD&Fファンの皆さんが,試合を見に来てくれています。だからきちっとし た試合をしたいし,かっこいいプレイを日本の皆さんにも見せたいです。もちろん勝たねばなりません」「前回のJAPAN Roundで負けたのは正直予想外でした。どうしたらよいかしっかり考えを練って来ましたので,今日はその考えが現実のものになるでしょう」と述べてくれ た。
またほかの選手も交えて,一番対戦したくない日本選手は誰という問いに対して,一番人気(不人気?)だったのは阿修羅をプレイする寿選手であった。 JAPAN Round終了後に日本チーム対策として特訓などをしたのかと尋ねると,6人で2週間の強化合宿を行ったというではないか。旧正月前の冬休みに突入してい たからこそ可能だったのだろうが,日本のプレイヤーにはちょっと想像しがたい熱の入れようである。
個人戦トーナメント
会場では別段ここでしか買えないオリジナルグッズが販売されているわけでもないのに,ゲーム内の有名プレイヤーのプレイ見たさでこれだけの客が集まるというのは,韓国における本タイトルの強さを見せ付けてくれるものであった。
なおKOREA Roundのレギュレーションだが,JAPAN Roundからとくに変更はない。クライアントは日本のバージョンに準拠し,消費アイテムは一部を除いて原則使用不可。すべての対戦で,3本勝負の2本を先取した選手の勝利となる。
続く「ファバル選手(マイスター) vs. ミサ選手(グラップラー)」だが,予選を常に2-0と無敗で勝ち上がってきたファバル選手は,どうやら注目選手だったようだ。マイスターは自爆型ロボット 「ガンナーロボット」の設置と,手榴弾などを用いた攻撃を得意とするクラス。1本目は開始早々からミサ選手がファバル選手に距離を取らせず,大技スパイア と連続コンボであっという間に1本先取した。
2本目はファバル選手もスライディングを活用して,慎重に距離を取りつつロボットを仕掛けるのだが,プレイヤースキルでミサ選手が完全に上回っていたよ うだ。手榴弾やロボットをたくみに避けながらファバル選手に詰めよるだけでなく,「分身」スキルによってロボットの誘導先を変える戦術が,かなり効果的 で,1本目と同じスパイアによってミサ選手が勝利となった。この結果により個人トーナメントから日本選手は全員敗退。決勝戦は韓国チーム同士の戦いとなっ た。
「カマエルセラフ選手 vs. ミサ選手」による決勝戦は,お互いに格闘家キャラクターの対決。カマエルセラフ選手は相手のクラスや状況によって,使用スキルと戦闘スタイルを柔軟に切り 替える判断力,そしてプレイヤースキルで完全にミサ選手を上回ったようだ。結果は2-1でカマエルセラフ選手が優勝を決めたのだが,1本目の試合で打撃系 のストライカーでありながら,投げ技系が得意なミサ選手のグラップラーを,あえて投げ技でKOするなどの見せ場を作り,会場を大いに沸かせてくれた。
日韓決闘大会 4Set
阿修羅vs.トルネードの対戦で始まった1本目,寿選手はアッパースラッシュでまずチョブン選手を沈め,HPは大幅に削られた状態だが続く二人目のミサ 選手をコンボで追い詰めてとどめを刺し,幸先は非常に良かった。しかし韓国チーム3人目の選手は,あのカマエルセラフ選手。2人勝ち抜きダメージを受けて いる寿選手を倒し,さらに日本チーム二人目の輝ノ進選手の退魔士を,開始5秒で瞬殺。最後の相手はバトルメイジのアミリア選手,しかしライトニングダンス から発剄という流れで,あっというまに3人を倒してしまった。日本チームはこの状況にやはり心理的なダメージが大きかったのか,続く2本目はトルネードの チョブン選手が,3人ストレート勝ち抜きでこの勝負をさらう。
GMナゲール氏は4Setの試合を見て,そろそろ疲れが出てきたのか日本選手はコンボのミスが明らかに増え,集中力を欠いているのではないか? と分析していた。
優勝は日韓どちらに? 韓国1ポイントリードで突入した5set
余裕のない日本チームだったが,第1試合アラド RMT 「寿選手/gaia201x選手vs.ミサ選手/バラコ選手」の試合は韓国ペアがストレート勝ちで,さらに韓国へ1ポイントを与えてしまう。
もうあとがない第2試合は「ファバル選手/輝ノ進選手vs.ジンヨンアサランヘ選手/チョブン選手」の対決。日本チームは範囲攻撃に強い退魔士と遠距離 攻撃でバックアップできるマイスターという,大変相性のいいペアだけに勝利が期待された。1本目はファバル選手が冷静な動きを見せ,まず1勝。だが続く2 本,3本目はファバル選手が徹底的にマークされ,距離を置かせず乱戦に持ち込まれ負けてしまったのだ。これにより日韓決闘大会優勝国は韓国に確定。
非常に残念だが消化試合となる,「あー君選手/アミリア選手vs.☆メロウ☆選手/カマエルセラフ選手」による第3試合もまったく同じ状況で,1本目を日本ペアが勝利。2本,3本目は韓国ペアが制し,総合得点は「日本 6-10 韓国」と大差をつけられる結果となった。
個人戦,国別対抗戦共に韓国チームに勝利をもぎとられた日韓決闘大会KOREA Round。多くの観客が取り囲むステージや,椅子すらないスタンディング状態でのプレイという,いつもとまったく違う環境が,プレイに影響を与えなかっ たとはいえないだろう。また,韓国で行われるオフラインイベントではありがちな話なのだが,度重なるマシントラブル,ゲームパッドの設定を事前に行わない 段取りの悪さ,そしてテレビ番組収録の関係で何度も強いられるリハーサルだけで,やたらと暑いステージ上に軽く30分は待たされるなど,あまりプレイヤー のコンディションを優先したイベント作りとはいえないシーンが,今回も多々見られた。
とはいえ,置かれた状況は韓国チームの選手も同じであることを考えると,大会終了まで途切れない集中力は,イベント慣れという理由だけではなく,やはりPvPが盛んで選手層が厚い中,トッププレイヤーと言われるだけの実力を持っている証拠なのだろう。
日本と韓国ではアラド戦記のサービス期間に,1年近い差が開いている。次回,再び日韓決闘大会が開催されるその日まで,アラド戦記プレイヤーは腕を磨いて備えていてほしい。
寿選手:納得のいかない試合もありました。できればその試合の様子はカットしてほしいぐらいの気持ちです。
輝ノ進選手:会場の雰囲気に飲まれてしまい,本当にあっという間というか,何がなんだか分かりませんでした。今は正直,少し疲れました……。これだけ盛り上がりのあるイベントは日本では考えられません。
gaia201x選手:KOREA Roundは完敗でした。日本の皆さんごめんなさい。今回は韓国が最強ということになってしまいましたけれども,今は最強の称号を預けておきたいと思います。次に戦うときはもっと腕を挙げて,最強の称号を日本に取り戻します。
ファバル選手:韓国の選手はテレビ中継に慣れているようでしたが,日本のプレイヤーはあ まりオンラインゲームの大会に出る機会もありませんので,慣れの差が結果に出てしまったのかなと思います。JAPAN Roundのときよりはマイスターへの対策も練られていたと感じました。ベストの状況ならば,もしかしたら勝てたかもしれません。
あー君選手:日本チームが勝てるわけがないだろうという雰囲気で,この日韓決闘大会が始 まって,それでも一部のプレイヤーはゲーム内で声をかけてくれたり,応援や励ましをたくさんくれました。結果を残して,日本が勝てるわけがないと言ったプ レイヤーを見返したかったし,応援してくれた人達には日本の勝利を持って帰りたかったです。それができなくて残念です。また,自分のプレイのふがいなさに も意気消沈しています。緊張とか椅子もないというプレイ環境のせいではなく,単純に実力で負けました。それがまた余計悔しいです。最後に韓国チームの人が 「あー君よかったです」とコメントしてくれたのは,嬉しかったです。
では最後に,韓国代表チームリーダー,ジンヨンアサランヘ選手のミニ インタビューをお送りして本記事の締めとさせていただこう。
まずは優勝,おめでとうございます。
ジンヨンアサランヘ選手:
ありがとうございます。
4Gamer:
今回の大会で優勝した理由はなんだと思いますか。
ジンヨンアサランヘ選手:
以前の日本大会では「チーム戦」で敗北したので,メンバー間のチームワークを高めようと,チーム戦の練習を集中的に行ったのが勝利要因だったと思います。韓国のリーグではチーム戦が存在しなかったため,日本大会でかなり苦戦したのは事実でした。
4Gamer:
練習はどのように行いました?
ジンヨンアサランヘ選手:
チームメンバー同士の時間を合わせるのが難しく,arad RMTなかなか6人全員で集まっての練習ができませんでしたが,それぞれ2~3人ずつ集まって練習を続けまし た。決闘場のチャンネルに入場して,チーム戦に関連したさまざまな攻撃と守備の方法について研究したのも,効果的だったと思います。1日に少なくとも2時 間,長いときは5時間も皆で練習に没頭しました。
4Gamer:
今回の大会で,日本代表チームはどうでしたか?
ジンヨンアサランヘ選手:
前回の大会よりも実力が向上していたと思います。日本選手の長所は学ぼうという姿勢が強いことで,私達(韓国チーム)がアドバイスしたことをしっかり学 習してきたと感じました。学ぶ速度が非常に速く,もうすぐ韓国チームと対等な水準になると思います。とくに今回の大会で実力がハッキリ向上していた選手 は,バトルメイジのキャラクターを使う選手とマイスター(メカニック職業)を使う選手でした。
4Gamer:
一般プレイヤー以上のレベルを持つ選手として,アラド戦記に願っていることはありますか。
ジンヨンアサランヘ選手:
4Gamer:
それでは最後に,日本代表選手達に何かアドバイスをお願いします。
ジンヨンアサランヘ選手:
私達も普段から行っていますが,上手な人々のプレイムービーを見ることが重要ですね。日本選手の皆さんは基本的に強いので,韓国トッププレイヤーの派手 なプレイムービーを見ながら練習すれば,より一層強くなるでしょう。もっとも,そのようなムービーを入手することが難しいかもしれませんが……。
4Gamer:
ありがとうございました。
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